第8章 08. 出逢い
[08. 出逢い ]
※義勇視点
降り積もる雪の中で泣き叫び血を流す少女と出逢った。その瞳は悲しみに染まり血だらけの人喰いに対して両手を差し伸ばしていた。
ーーー死ぬ気だ。
「ーーーっ!」
無意識に雪の中を駆け出し鞘から刀を抜き鬼の頚を斬り落としていた。助かった少女は涙を流しながらこちらを振り向いた。雪のように白い肌に濃紺色の長髪、色白で手足が細く全く筋肉がついていないのではと思うほど華奢な少女だった。助けて良かったのだろうかと今でも思う。自分がした事は正しかったのだろうか。生かした俺を怨んでいるのではないだろうかと。そんな事を考えていると小雪はこちらを振り返り声を掛けてきた。
『義勇さんの好きな食べ物は何ですか?』
「・・・いきなりなんだ?」
稽古が終わり陽が暮れ始めていた。疲れきっていたと思っていたが杞憂だったようだ。小雪は目を輝かせながら俺に詰め寄って来る。
『今日は私が夕食を用意しますので』
「・・・作れるのか?」
『料理くらい出来ます』
余計な一言だったようで頬を膨らませ不機嫌になる。
「鮭大根だ」
小さな声で呟くと小雪は『美味しいですよね』と微笑んだ。
「・・・あぁ」
何故か胸の奥が鳴った気がした。小雪は本当に良く笑うようになったと思う。白銀の世界で出逢った少女は鬼に家族を殺され絶望し死を望んでいた。あの頃からは想像が出来ない程だ。
ーーーお前は水柱にならなくてはならない。
水柱が不在の今一刻も早く誰かが水柱にならなければならないのだ。俺は最終選別を突破していない事を知ったらお前はどう思うのだろうか。
『義勇さん?』
「ーーーっ」
髪がふわりと風に揺れ俺の頬を撫でた。色白の肌に綺麗な黒目がこちらを覗き込んでいる。思わず息が詰まりそうになった。
『何か考え事ですか?』
「あぁ・・・お前が最終選別を突破出来るのかと考えていた」
『有難うございます・・・。私、頑張ります!義勇さんと一緒に戦えるように強くなってみせます』
両手を握り締める小雪だが小さく震えているのがわかった。まだ幼い少女なのだ。人喰い鬼と対峙して果たして生き残れるのだろうか。
ーーーだが、最終選別を突破しなければ鬼殺隊員として認められず日輪刀も貰えない。