第3章 嘘つき。
「糸だ!糸で操られてる!糸を斬れ!」
突然、ひらめいたように炭治郎が叫んだ。
糸がある。背中側に濃い色が漂っているのは私も見えていた。
「待って炭治郎、糸を斬るだけだとまたすぐに…」
そう言いかける前に、炭治郎が糸を斬った隊士が再びぎしぎしと動き出した。
──ふわっとまたあの寂しげな色が漂った。
「っ!?どこから…」
「凛!ごちゃごちゃ言ってねえでさっさと斬りやがれ!」
伊之助が、私に向かって切りかかってきた隊士を剣で弾いてくれた。
どんどんと強くなっていくその色に包まれそうで、少し怖くなった。
瞳をぱっと目の前の光景に戻す。
「ごめん伊之助、ありがと」
「お、おう…って俺をいちいちホワホワさせんな!」
「村田さんと俺で操られている人たちは何とかする!伊之助は…」
炭治郎がそう言った時だった。
ふっと風が吹いた。
この子だ。
見なくても、確信した。
身体にひしひしと伝わってくる。
振り向くと、そこには1人の男の子が糸の上に立っていた。
鬼なんだ。
足元で草がかさ、と音を立てる。
私はゆっくりとその子に近づいた。
「凛、落ち着け。その子は鬼だ。さっきからひどい刺激臭がしていて俺の鼻が上手く効かないんだ。」
炭治郎にも感じていたのか。
「…寂しい色を出してるのは、あなた…?」
私を捉えたその瞳に、怯えるような曇りが走った。