第1章 怪物との境界線
この世にはひとならざる人ならざる者がいる。
それが【鬼】だ。
鬼ーーー人に災を起こす者…人の形をした人以上の怪力を持ち無慈悲な存在ーーー
人の中にも鬼の様な悪行をする者もいるが、この世に存在しているのは人間の血肉を糧として生きている、まさに本物の鬼なのだ。
その残虐無比な悪鬼を狩る為結成されたのが、鬼殺隊。
文字通り鬼を殺す人間の集まりだ。
では人を喰べない鬼が目の前に居たらーーーー
それでも彼等は鬼だから、という理由でやはり殺してしまうのだろうか。
どうやら鬼、と一概に言っても色々な者が居るらしい。
風の噂で聞いたのだが、彼の支配から逃れ、尚且つ人を喰べないとか…。
食欲を睡眠を摂る事によって抑えている、と聞いた。
【彼の支配から逃れた】と言うだけでも凄い話なのだが、人も喰らわないで生きている、なんて最早ソレは本当に【鬼】なのだろうか。
とまで思ったが、あれ、ソレって近くに居るじゃん。
私じゃん←
と今更ながら気付いた。
嫌、睡眠によって飢餓を抑えているソレとはまた違った系統なのだ、私は。
それに【彼からの支配から逃れた】と言ってもこの事に関して彼公認なのだ。
確かに支配からは逃れたが、彼に気に入られてしまっている為、別の意味で支配されているようなものだ。
彼ーーーー鬼舞辻無惨は鬼を生み出す存在であり、鬼の頂点に君臨する始祖だ。
その彼に何故か気に入られて、今の今まで生き延びている。
私という【異質な存在】は本来ならば彼の手によって葬られている筈なのだが、何故か気に入られ私の存在を他の鬼にも私に手を出すなと命じているらしい。
生憎今のところ鬼殺隊にも知られる事もなく、殺される心配をせずに安心して過ごせるのはいいが、出来れば関わって来ないで欲しいと切に願う。