第13章 旅のお供には信頼出来る奴を置け【帰省編①】
真選組に入ったことを後悔したことなんて一度もない。
ただ…最後まで約束を守り通すことが出来なかった自分自身が情けなくて…嫌になる。
もう、振り返らないと決めたはずなのに…結局私はここに来たあの日から…何一つ捨てることが出来ていなかったんだ。
沖田隊長の部屋の前に立ち襖に手を掛け俯いた
私が真選組をやめると言ったら…沖田隊長は何て言うだろう。
中途半端な気持ちぶら下げてんなって…怒るかな。
あの約束は口先だけだったのかって…見損なうかな。
呆れられたって当然だ…。
こんな半端な覚悟の人間が人を護ることなんて…
出来るはずもない。
「おう!なんだ大石、また沖田隊長にパシられてんのか?」
声のした方に振り向くと、廊下の突き当たりから原田隊長がこちらにやって来るのが見えた
『…いえ…ちょっと沖田隊長に話したい事があるだけです』
言いながら私は原田隊長が手に持つバケツを見つめた
『ていうか原田隊長こそ…何ですかそれ』
「見てわかるだろ?釣りだよ釣り!」
『は?』
目を点にする私に原田隊長はバケツに入った大量の魚を見せた
「今日はオフだったからよ、さっき隊士何人かと釣りに行ってたんだが…まぁ大量に釣れやがってな!」
無邪気に話す彼を見つめ私は堪えきれずに声を出して笑った
『あははは!オフの日に魚釣りって…ほんとおじさんじゃないですかー』
「魚釣りの楽しさがわからねーたぁ、まだまだ餓鬼だな。なんなら今度のオフの日、付き合ってやってもいいぜ」
『…い、』
− 私、帰ろうと思います −
『いいですよそんな…魚釣りくらい1人でも出来ますし…私ならその倍は釣れますよ』
「ほー、じゃあもし倍釣れたらお前の好きな餡蜜奢ってやるよ」
『じ、じゃあ…約束ですよ!』
部屋に入っていく原田隊長を見つめ溜息をつくと私は少し強めに沖田隊長の部屋の襖をノックした
しかし、しばらくしても中から返事はなく、私はそのままゆっくりと襖を開けた
『あの…沖田隊長?』
寝てるのだろうか、沖田隊長はこちらに背中を向け布団に横になっていた
『…入りますよー…』
言いながら部屋の中に入り、沖田隊長の顔の方へまわると彼は布団を深くまで被り、深い寝息を立ててぐっすりと眠っていた