第11章 人の話は最後まで聞くべし[沖田side]
「フフッ冗談よ。でももしそうだとしたら、ちょっと残念。私…総悟くんのこと好きだったのに」
ほんのり頬を染めてそう言う彼女を俺はクスッ笑い見つめた
「からかうのはやめてくだせェよ」
「あら、やっぱりわかっちゃった?」
「…からかい上手なのはアンタの十八番ですからねィ…。
それに、いるんだろィ…忘れられねェ人が」
俺の言葉にお雪さんは少し俯き、やがてそっと微笑んだ
「ええ、…」
「なァ、アンタが想うそいつは…」
「さっ、餡蜜出来たわよ。あの子の所に持って行ってあげて」
話を逸らすかのように俺に餡蜜を持たせ背中を押すお雪さんを不審に思いながら大石の座る席に向かうと何故かそいつは店の柱に頭を打ち付けていた
「…何してんでィ」
『あ、いえ!な…何でもないです』
大石は苦笑いして俺が持ってきた餡蜜に目を向けた
はぁ…なんで俺はこんな変な女を好きになっちまったんでィ…。
けど…
「美味ェかィ?」
『はい!すごく美味しいです!!』
そう言って笑う大石の顔を素直に可愛いと思ったのは事実だ