第7章 鉛の空にきのこ雲
□鉛の空にきのこ雲
「(本当は行かないでって言いたい。)」
けど貴方は行かなくてはいけないから
私はいつも平気な顔してそれを見送る。
それが真っ直ぐ進む貴方への信頼。
『(本当は行きたくなどないんだ。)』
けれどあいつが無理して笑うものだから
俺はその優しさを無駄にしないように
振り向かずに真っ直ぐ前を向く。
それが信じてくれるお前への愛情。
「(きっといつか帰ってこない時が来る。)」
『(きっといつか帰ることが出来なくなる。)』
それでもいつも通りを演じ続ける。
それが 2人の愛のカタチ。
なんて強くなんと純粋な気持ちだろうか。
「(……貴方の息災を心から。)」
そう祈る彼女はいつも空を見て涙を流す。
何処かの作家が訳した
甘ったるい冗談をなどを貴方のために
紡ぎたかったと苦笑いをしながら静かに雫を落す。
『(お前が幸せに生きられるように。)』
そう願い前を向く彼は進み続ける。
甘ったるい冗談が好きな愛しい彼女の幸せを
自分の手で作りあげるのだと
迷いなく銃を握りしめて隊服に身を包む。