第5章 君を見つけた
□君を見つけた
『なんだあの人。すげぇ、可愛い。』
運命と言うものを俺はその時初めて知った。
大きな紙袋を地べたにおいて
ぼーっと駐車場でタバコを吸う君を見た時
本当に運命と言うものを感じたんだ。
『…何してんすか?』
「………タバコ吸ってんの。」
柄にもなく声なんてかけて
少しばかりウザそうに答える君に
なぜだかとてつもなく愛しさを感じる。
『タバコ、めちゃくちゃ似合わないっすよ?』
「……よく言われる。ほっといてよ。」
子供っぽい顔にピンク色の化粧をして
上品なワンピースを来た彼女は
似合わないタバコを慣れたように深く吸う。
『タバコになりてぇ。』
「…っ、ふふっ。馬鹿だねぇ。」
その唇に惹き付けられて少しタバコに嫉妬した。
桃色で形のいい唇は小さめで
弧を描くたびに__キュッ。と
可愛らしく口角がつり上がる。
『おねぇさん、名前は?』
「んー、ひなちゃんにしようかな。」
『絶対嘘じゃん。』
「けどタバコより似合う名前だと思わない?」
その可愛らしい呼び名は嘘だと分かっても
なぜだかその姿にピッタリと良く似合う。
ひなと名乗る彼女は自分の事を
とてもよく分かっているのだろう。
『じゃあ、ひな。買い物帰り?』
「見ればわかるでしょ?まあ買ってないけど。」
『あー、買ってもらったのか。』
「趣向品の5000円以上の買い物は
絶対に自分でしないって決めてるの。」
『うわ。めっちゃ性悪。』
「やめて、堅実と言ってよ。
お金貰ってるわけではないんだから。」
これは中々くせも強く性悪な女だ。
純朴そうな顔をして飄々とそういう彼女は
上品な服装なのにまるで内面を表すかの様な
鮮やかな高いヒールを履いていて
チグハグなのにそれが何とも趣味がよく見える。