第13章 ヤナギ3(??前提トレイ)
敏感になってしまった身体に、トレイさんの衣服が掠ってくすぐったい。
「ぁぁ…あ…」
それにすら感じてしまって、回した腕が震えてしまう。
トレイさんはそれをくすくす笑うと、そのままじっと私が落ち着くのを待ってくれた。
申し訳ないことに、私は意識をすっかり飛ばしていた。
目が覚めると、見覚えのない部屋にいた。
制服を着ていたのに、大きめのシャツに着替えさせられている。
ちょっと恥ずかしいけど、ありがたかった。
「起きたか?」
トレイさんが柔らかく話しかけてくれる。
また美味しそうな香りがして、ちょっとお腹がすいてきた。
「す、すみません…色々ご迷惑おかけしちゃったみたいで…」
「こちらこそ」
先輩はにこっと笑うと、ペンを見せてくれる。
「ほら、この通り」
「よかった……」
トレイさんは温かいミルクとクッキーを出してくれると、隣に座る。
「強引で、すまなかった…」
「あ、いえ…、大丈夫です…」
先輩は怖くなかったか、痛くなかったか、と優しく聞いてくれた。
全然大丈夫だと答えると、安心したように肩を撫でおろす。
「でも次は、ああいう危ないお茶はやめてくださいね」
と冗談まじりで言うと、
「あれは何も入れてないただのハーブティーだぞ」
と真顔で返された。
「え…」
嘘ではないらしく、昨日使った茶葉だと見せてくれる。
本当に普通のお茶のようだった。
「プラシーボっていうやつ」
トレイさんは悪戯っぽく笑った。
それはどこかあどけなさがあって、可愛らしく思えた。
後から一気に羞恥心が襲い、そのまま布団にもぐりこんだ。
「ごめんごめん」
「ごめんじゃないです…!恥ずかしいです…!」
急に、ぎゅっと後ろから抱き締められてびっくりする。
「このまま、ここから逃げないか?」
「…っ」
「手伝うぞ…これ以上…君にこんな目に…。
いや、俺が言う資格はないな…」
「大丈夫です……それにまた、オーバーブロットがあっても…」
トレイさんの優しさに切なくなる。
それでも、私は、どうしても自分のこの力で守りたい人が出来てしまったから。
「いつか、逃げたくなったら、トレイさんに最初に相談します…」
「わかった」
優しく返事して、私から離れていく温もりが少し悲しい。
いつか解決すると思ったけれど、トレイさんの言葉に、まだ終わりの見えない事柄なのだと改めて痛感してしまった。