第11章 クロユリ6(五条悟)
「これは、なんですか?」
キョトンとしながら英語の例文のように質問してしまった。
段ボール3箱以上はある大荷物が先生の部屋に運ばれる。
「映画のDVD。訳ありで貸してたのが戻ってきたからね」
「へえ」
「暇な時は観てていいからね」
「ありがとうございます」
積まれていくそれらのタイトルを見ながら、本棚にしまうのを手伝った。
「るるは映画とかあんまり観ない?」
「そうですね、あんまり記憶にないです…」
幼い頃から貧しい生活だったから、テレビの記憶すらあまりない。
「あ、この、お魚の女の子がストーカーになるアニメは見た気がします」
「その捻れた記憶の仕方、やめよ?」
先生が後ろから優しく抱き締めてくれて、低く囁く。
「るるの寂しかった思い出は、僕が埋めてあげられるかな?」
「…っ、も、勿論です…」
ちょっと照れ臭くて、言葉が詰まってしまった。
「一緒になにか観に行こう、今度」
「…はい、嬉しいです」
一人だった思い出が少しずつ二人になるのが嬉しい。
先生は少しだけ楽しそうに笑うと、いきなり私を抱き上げた。
「せっ…!!」
「片付けは後にして、一回シよ」
「…終わってからにしましょ…?
いつもそう仰って朝に……」
「大丈夫大丈夫、無理はさせないよ?」
「…っ、うそつき…!」
恥ずかしくて顔を見られないように先生の肩口に隠す。
「あーむりむり、かわいいもん。
我慢出来ないからそれ」
軽率にそう言うと、ベッドに優しくおろされる。
高い視線から急に下がって、少しだけ体が強ばる。