第2章 ***
「でもあのお店…いいお小遣い稼ぎになるのよね」
「そ、その分は俺が何とかしますから!」
わざと意地悪な事を言えば、彼は必死に食い下がってくる。
それだけ本気なのだろう。
「そうねぇ…じゃあチャンスをあげる」
「…え?」
「あなたがどれ程本気なのか私に教えて?口だけの男は嫌いなの」
「っ…、でも…どうやって……」
「そんな事自分で考えなさい」
私も本気だった。
元々好きでやっている商売だ、今すぐ辞めるつもりなんて毛頭ない。
それに今までだって彼のような事を言ってきた客は何人もいる。
金に物を言わせて私を自分のモノにしようとする輩が。
でも…もし彼が、私の気持ちを変えさせるくらいの本気を見せてくれるなら…
「…期待してるわよ」
「……、」
「けど憶えておいて?あなたの本気が私に伝わらなかった時は、プライベートではもう会わないからそのつもりで」
「……解りました」
期間は1ヶ月…その間に私の気が変われば彼の勝ち。
言われた通りあのお店は辞めて、彼だけのご主人様になるつもりだ。
(…彼がどう出るか楽しみだわ)
それから私たちはこれまで通りの生活を送った。
学校では顔を合わす事なく他人のフリ。
相変わらず週に一度だけ彼は私に会いに来たが、これと言って特別なアプローチをしてくる訳ではなかった。
ひょっとしてもう諦めたのだろうか?
もしそうだとしたら拍子抜けだ。
そんな風に思いながら日々を送っているうち、あっという間に期限の1ヶ月が近付いてきた。
そして…
「うーわ、マジかよ…」
「…?」
朝…昇降口にある掲示板の前に、生徒たちがわらわらと集まっていた。
何の騒ぎだろうと覗き込んでみれば…
「…!」
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