第9章 歪んだ愛情
「ずっと前から…、好きでした…っ!」
好きな人に告白した。
虹星先輩…同じ部活動の先輩だった。
今年で卒業してしまうから、ダメ元で告白を決意したのだ。
「……!」
あまりにも予想外だったようで、先輩は目を見開いたまま固まっていた。
(ど、どうしよう…!このあとどう切り抜ければいいの…っ?)
緊張しすぎて、告白するまでずっと考えていた行動が吹っ飛ぶ。
俯いたまま焦っていると、上から声が降ってきた。
「俺も…、莉亜の事が好きだった。俺で良ければ、付き合って欲しい。」
「……っ!」
嘘でしょ。これは夢…?
考えもしなかった答えに頭が真っ白になる。そして、頬を暖かいものが伝う。
「よろしく……お願いします…っ」
震える声で、精いっぱい返事をした。
これから、幸せな人生が始まる……!!
……そう、思っていたのに。
「今、どこにいるんだ?」
「今日話していたあの男は誰だ?」
「俺以外と話さないで。」
「俺以外の男に半径2m以上近づくな。」
激しい束縛では飽き足らず、ついには暴力にまで走った。
あんなに好きだった先輩への気持ちは、たった数週間で完全に冷えきってしまっていた。
(もう…別れよう。)
ついていけない。
私は放課後、告白した時と同じように先輩を校舎裏に呼び出した。
「どうした?いきなり呼び出して。」
「先輩……」
いざ虹星先輩を前にすると、怖くなってきた。
また、殴られるんじゃないかって。…でも、ここで言わなきゃそれがずっと続いてしまう。
「…先輩、私と……別れてください。」
虹星先輩の瞳が揺れた。
「は…、なんで?」
「…好きじゃ、なくなったからです。」
「…そうか……」
先輩は、大きくため息をついた。
「…ごめんな。…今まで辛い思いさせて…。……じゃあ、またな。」
先輩は項垂れて、その場から立ち去った。
「…………え?」
拍子抜けした。
もっとしつこく言われて、怒鳴られると思ってた。
こんなにもあっさり引くものなのか。
まあ、何はともあれよかった。
「これで…、私は自由…!」