• テキストサイズ

〜宵の中、蜜に酔う〜 《短編集》R18

第6章 最期の夜を君と飾る





「っ……!!?」


一気に目が覚める。

裕貴を抱きしめる腕が震える。


冷たい。固い。


「え……嘘、でしょ……?」


震えながら呼吸を確認しても、呼吸がない。

胸に耳を当ててみても、心臓の音がしない。


裕貴は死んでいた。幸せそうに…安らかな微笑みで。



余命宣告通り、1ヶ月でこの世を去ってしまった。


「う…っ、あ…っ、裕貴…っ、裕貴…っ!!」


どんなに呼び掛けても、揺すっても、裕貴は返事をしない。そんなこと、分かりきっているはずなのに、やらずにはいられなかった。



「いや…、いや…っ、いやぁぁぁっ!!裕貴…っ!お願い…っ、戻ってきて……!」


裕貴の頬に、涙がぽたぽたと落ちていき、裕貴の頬を濡らしていく。


「ふっ、うあぁぁ……っ、…あっ、ああぁぁ…っ…」


止まらない。溢れて溢れて、止まらない。


あれほど泣いたのに…。


涙って…枯れないんだな……。



私は泣いた。涙は枯れることを知らずに次から次へと溢れてくる。


ねぇ、裕貴…。やっぱり私…貴方がいないと無理だよ……耐えられない……















✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼✼••┈┈┈┈••✼••┈


7年後───



「ママぁー!!これからどこ行くのー?」

「んー?これからねぇ、パパの所にお参りに行くんだよ〜」

「そうなの〜!?パパ、なんで遠くにいるの〜?」

「パパはね、ママ助けるために、お空に行ったんだよ。だから今日は友莉も、パパにありがと〜!って言うんだよ?」

「うん!」




私は今、5歳の娘、友莉を連れて裕貴のお墓参りに来ている。


7年前…裕貴の死去後、私は生きる気力を失い、家に塞ぎこもってた。

食事は喉を通らず、泣いてばかり。


しかしある時、身体の異変に気づいた。生理が来てない。更には吐き気や目眩などの症状も。


風邪かとも思ったが、明らかに何かおかしいので病院に行った。

すると、なんと妊娠している事が発覚したのだ。

裕貴との子だ。




裕貴…


私に、生きる希望を与えてくれて、ありがとう。


私を愛してくれて……ありがとう…。




[完]



/ 86ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp