第6章 最期の夜を君と飾る
「っ……!!?」
一気に目が覚める。
裕貴を抱きしめる腕が震える。
冷たい。固い。
「え……嘘、でしょ……?」
震えながら呼吸を確認しても、呼吸がない。
胸に耳を当ててみても、心臓の音がしない。
裕貴は死んでいた。幸せそうに…安らかな微笑みで。
余命宣告通り、1ヶ月でこの世を去ってしまった。
「う…っ、あ…っ、裕貴…っ、裕貴…っ!!」
どんなに呼び掛けても、揺すっても、裕貴は返事をしない。そんなこと、分かりきっているはずなのに、やらずにはいられなかった。
「いや…、いや…っ、いやぁぁぁっ!!裕貴…っ!お願い…っ、戻ってきて……!」
裕貴の頬に、涙がぽたぽたと落ちていき、裕貴の頬を濡らしていく。
「ふっ、うあぁぁ……っ、…あっ、ああぁぁ…っ…」
止まらない。溢れて溢れて、止まらない。
あれほど泣いたのに…。
涙って…枯れないんだな……。
私は泣いた。涙は枯れることを知らずに次から次へと溢れてくる。
ねぇ、裕貴…。やっぱり私…貴方がいないと無理だよ……耐えられない……
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7年後───
「ママぁー!!これからどこ行くのー?」
「んー?これからねぇ、パパの所にお参りに行くんだよ〜」
「そうなの〜!?パパ、なんで遠くにいるの〜?」
「パパはね、ママ助けるために、お空に行ったんだよ。だから今日は友莉も、パパにありがと〜!って言うんだよ?」
「うん!」
私は今、5歳の娘、友莉を連れて裕貴のお墓参りに来ている。
7年前…裕貴の死去後、私は生きる気力を失い、家に塞ぎこもってた。
食事は喉を通らず、泣いてばかり。
しかしある時、身体の異変に気づいた。生理が来てない。更には吐き気や目眩などの症状も。
風邪かとも思ったが、明らかに何かおかしいので病院に行った。
すると、なんと妊娠している事が発覚したのだ。
裕貴との子だ。
裕貴…
私に、生きる希望を与えてくれて、ありがとう。
私を愛してくれて……ありがとう…。
[完]