第5章 車内エッチ
「はぁ〜〜、疲れたぁぁぁ」
大会を無事終えた私達は、地元に帰る為バスに乗り込む。
このバスは私達専用のバスで、顧問の先生と部員以外の乗客は居ない。
つまり、騒ぎ放題だ!
大会では、なんと二位にまで上り詰めたが、決勝戦では惜しくも敗退。しかし、全力を出してここまで来れたのだ。天敵の学校にも勝てた。
そのおかげで気持ちは軽い。進路に響くような重要な大会でもなかった為、落ち込むのはその場きりで、今は二位になれた嬉しさで皆テンションが高い。
出発直後はお菓子を食べたり世間話…下ネタで盛り上がったりもしたけど、半ば辺りまで来ると、皆疲れで眠ってしまった。
勿論私も寝ていた。なにせ、伊織とのセックスのせいで、明け方まで起きていたのだ。試合中も睡魔が半端なかった。
しかし、起こされたのだ。伊織に!
「ん、う〜ん……、ん?」
視線を感じてうっすらと瞳を開けると、伊織がこちらをじっと見ている。
「ふああぁ…、何?」
大きな欠伸をして用事を聞くと、伊織は何でもないと言って前を向いてしまった。
「…ねぇ?昨日…いや、今朝のあれ……凄かったねぇ?」
少しからかってみようと思い、耳元でボソリと呟く。
「今朝…?なんかしましたっけ。」
伊織がきょとんとして首を傾げる。
「えぇ?覚えてないの〜?ほら、二人で旅館の中庭で…」
伊織は目を瞑って考え込む。そして、謝った。
「すみません、俺、睡眠障害持ってるじゃないですか。それのせいか、夜中勝手に動いたり、記憶が無くなることあるみたいで……」
「あ……、そ…なんだ……」
一気に心が沈む。
そっか…伊織の記憶には無いんだ…。私とシた記憶が…。
……もしかしたら、あの時の伊織も正気じゃなくて、その病気のせいで…?
そう考えた途端、悲しくなった。
人に自分を忘れられるって……こんなに悲しくなるんだ…。