第1章 告白
「……なに?」
夕暮れが差し込む校舎内。
他の生徒たちは既に下校し、辺りは静けさに包まれている。
二年前、同じクラス、そして隣の席になってから一気に仲良くなり、いつしか恋心を、目の前で怪訝な顔をしている彼に抱いた。
クラスが離れてからは、全く話さなくなった。しかし想いは膨れる一方。
卒業式前日、私は伊藤 裕貴に告白を決めた。
「突然呼んでごめん。…明日で卒業だから、どうしても言いたいことがある…」
緊張で心臓がドクドクと脈打つ。気を抜くと息が乱れてしまいそうだ。
言わなきゃ。最後に。
グッと拳に力を入れる。
「1年生の時から…っ、ずっと裕貴の事が好きだった!ダメ元だけど……、付き合って欲しい……っ」
普段の自分なら絶対に言わない様な事を口にし、顔が熱くなる。同時に、唇を噛み締めた。
結果なんて分かってる…。どんなに仲が良かったとしても、裕貴は女嫌い。例え私が当時、裕貴にとって異性で最も仲の良かった相手だとしても……
『付き合って欲しい』なんて、私ごときが図々しいと思っている。…でも、1%でも望みがあるのだとしたら、それに全てを賭けようと思った。
チラリと裕貴を覗き込むと、固まっている。
…当然だ。いきなり告白なんてされたのだから。
一向に聞こえない返事を待ち、更に強く拳に力を入れる。
「……いいよ。」
やっと聞こえた言葉に耳を疑う。
「……えっ?」
「いいよ、付き合っても。莉亜の事、嫌いじゃないし。……莉亜のおかげで、一年の時結構楽しかったし。」
頬を染めて目を逸らす裕貴。
嬉しすぎて、涙が出てきた。
「ほん、とに、いいの……?」
コクリと頷く裕貴を見て、更に涙がこみ上げる。
「………っ?」
身体を包む暖かな温もりを感じ、滲む視界に目をこらす。
裕貴の身体が、目の前にあった。
裕貴は、私を抱きしめていた。
「…莉亜……」
どちらからともなく、顔を寄せる。
「ん……」
最愛の人と交わす初めてのキスは、この上なく幸せだった。