第3章 男女での寝技は危険ですっ!
「はじめ!」
キャプテンの掛け声と同時に鳴り響くタイマー。
二人一組となった部員たちが、一斉に相手に襲いかかる。
ここは柔道部。そして今は、寝技の練習中だ。
真夏の道場はとても蒸し暑く、汗がダラダラだ。そんな中で寝技なんて、密着する技の練習をするものだから暑くてたまらない。
残り3分の2本、計6分。それが終われば10分の休憩に入れる。
今のセットが終わり、次の相手を探すと、自分が余っている事に気づいた。
「そっか、今日は女子奇数だから一人余るんだ…」
一本分さぼれる!と、周りに悟られないように心の中で喜んでいると、キャプテン──一つ年上の虹星先輩に声を掛けられた。
「莉亜、余り?」
「えっ?あ、はい!」
どうやら今日は男子の人数も奇数だったらしく、余った虹星先輩が、女子で余ってる私に声をかけたようだ。
「ならやろう。お願いします。」
「…。お願いします!」
先輩からお願いされてしまったら断ろうにも断れない。ましてやキャプテンだ。
せっかく休めると思ったのに…と沈む気持ちを抑え、場所を確保した先輩の元へ向かう。
「じゃあ、手叩いたら始めな。」
二人で交互に寝そべる。
虹星先輩の、よーい…という声の後にパンッと手の叩く音がする。
その音と同時に先輩に襲いかかる。
しかしそれは呆気なく阻止される。
起き上がろうとした身体は既に畳に押さえつけられ、虹星先輩の両手は既に、私の道着の襟と袖をきっちり掴んでいる。
「残念。まだまだ遅いな。」
ふっと笑う先輩にカチンときて、完全に固められる前に先輩の腰に両足を絡め、抜けられないように足首の指も使って、計三重に絡める。
柔道業界では、これを胴巻きと呼んでいる。
「く…っ」
案の定、それ以上動けなくなった先輩は全身を使って必死に足掻く。
「…………」
黙って息を整えながらその様子を見ていた私は、想像してしまう。…いや、きっと誰が見ても思うだろう。
女の足の間で、男が密着しながら前後上下と激しく動いているのだ。時には女に跨りながら。
余程清い状態じゃない人以外から見たら、こんなのアレにしか見えない。
……そう、セックス。