第16章 刻む想い・小湊亮介 ※裏
期末テスト前の放課後は部活も休みで校内はいつもより人も少なく静かだ。
真琴とテスト勉強を一緒にしようと約束していたから、図書室に向かうため階段を下りていた。
「真琴先輩もとうとう彼氏できちゃいましたねー」
ん?真琴の話。。。
「あぁ…何?お前も狙ってたのか?」
バスケ部だろうか…知らない奴らが俺に気付かず真琴の話をしている。
「彼氏っていっても、野球部の背の小せぇ3年だろ?来年は卒業していねぇんだし、また狙い目だろ?」
「まぁ…遠くの奴より近くにいる奴の方が良くなるんじゃね?」
バカみたいな笑い方をして、そいつらは去っていった。
真琴は大学には大人っぽい綺麗な女の人が沢山いるって心配してるけど。。。
それは俺も同じ。
俺なんかよりも毎日会えて、そばにいてくれる奴に心変わりするんじゃないかと。。。
そんな…らしくないことを考えながら廊下を歩いていると、前方の渡り廊下で真琴が誰かと話している。
あれは降谷と…春市?
教科書か何かを開いている降谷に真琴が何か教えているようだ。
頭を下げる降谷にニッコリ笑っている。
卒業したら、俺の知らないところでこんな風に過ごすうちに。。。
何か話して微笑む真琴に顔を真っ赤にさせた春市。
何かと我慢したり、物を譲ったり、小さい頃から兄って立場上当たり前だった。
でも、これだけは。。。
初めて思った…真琴だけは誰にも渡したくない。
降谷と春市と別れた真琴に近付いていく。
「真琴。」
後ろから呼ぶとゆっくり振り返る。
「先輩!」
嬉しそうに笑う真琴。
「今、春市くんと降谷くんいたんですよ?」
「ん。そう。。。」
「テスト勉強ですよね?行きましょうか、図書ーー」
言い終わらないうちに真琴の手を引いて階段を上がる。
「せっ…先輩?」
そのまま3年の俺の教室に連れてきた。
「先輩の教室?」
「そう。それから…来年、真琴が使う教室。」
「そっか!2・3年は持ち上がりだから来年はこの教室ですね!」
真琴は楽しそうに教室を見渡す。
「先輩の席ってどこですか?」
そんな真琴を後ろから抱き締める。