第6章 御幸一也の場合
あと一歩のとこで甲子園出場を逃した夏ーーー
先輩たちが引退し、俺はキャプテンになった。
正直、向いてないのかな…って思う。
目指すものは同じはずなのに考え方の違う仲間たち…
部はギクシャクしてる。
こんな時、哲さんなら。。。
俺は哲さんみたいにはなれないーーー
そして…俺を焦らせるもうひとつの原因。
最近、真琴の傍にいるアイツーーー
ノリの話だと1年の時に真琴と同じクラスでサッカー部のエース。
一緒にいるのをよく見かけるけど、どう見ても真琴のこと好きなんだろうなって思う。
真琴の気持ちはわからないけど、楽しそうだし。。。
何もかも上手くいかない、焦りと不安から俺は夜の自主練も他の奴らから離れてバットを振っていた。
「御幸くん!」
聞き覚えのある声に振り向く。
「真琴。。。」
「ここで1人で素振り?」
「うん、まぁ…ね。真琴は?」
「ん~、気分転換かな。なんとなくこっちに来たら御幸くんがいた。」
そうニッコリ笑う真琴。
部屋着であろう女の子らしい服装。
こんな格好で夜に散歩なんて…危機感なさすぎ。
俺なんか…倉持の友達ーーくらいにしか思われてないのかな。
「なんか御幸くんとゆっくり話すのって久しぶりだね?合宿以来かな?」
「あぁ…そうだね…。」
「やっぱりキャプテンって大変?」
ダメだ…真琴の話も頭に入ってこない。。。
「…?御幸くん?」
そんな俺に気付いて真琴が顔を覗きこむ。
「どうしたの?大丈ーーー」
次の瞬間…俺は真琴の手を引き抱き締めた。
「えっ…えっ///」
戸惑い身動ぐ真琴。
「みっ…御幸くん?」
「ごめん。ごめん…少しだけ…。」
情けない声で呟く。
驚いていた真琴が静かになった。
怒られるよな…殴られるかな…
トン…トン…
真琴の手が背中に回り、2回…優しく背中を叩くとそのまま慰めるように撫でてくれた。
その優しさに逆に我に返る。
「ごっ…ごめん!」
そう言って真琴を離す。
「急に…こんなこと…ホントごめん!」
頭を下げて謝ろうとした俺の手を真琴が優しく手を取った。
「きっと…色々あるんだよね?」