第5章 夏合宿
御幸side
今日は朝から大雨。
練習も室内練習だけだから、いつもより早く終わり、俺は自分の部屋で英語の課題に手をつけていた。
コンコンーーー
ドアをノックする音が聞こえる。
「はい?」
ドアがカチャと開き「御幸くん、今いい?」と真琴が顔を出す。
「あれ?部屋に来るなんて珍しいね?もしかして俺に会いにきちゃった!?」
「そうだよー!御幸くんに会いにきたの。」
予想外の返答に少し焦る。
「マジか~どうしたの?」
「英語の課題やった?」
「今ちょうど始めたとこ。」
「本当?一緒にやりたいな~と思って…ダメかな?」
「えっ?あっ…いいよ。俺の部屋でいいの?」
「うん。食堂じゃみんな集まってきちゃうし…お邪魔してもいい?」
「はははっ!それもそうだな。どーぞ。」
確かに真琴の周りにはいつもみんな集まってくる。
同じ寮にいても二人になる時間なんて諦めていた。
それが真琴の方から俺の部屋に来てくれた。
期待してもいいのか?
いや…真琴なら深い意味はないかもな…
「高島先生の課題すごいよね~好きな英語の本3ページ和訳なんて。」
「真琴は何にしたの?」
「小湊先輩のアドバイスで不思議の国のアリス♪」
「亮さん?」
「うん。洋一連れて図書室行ったら、小湊先輩がいて教えてくれたんだ♪」
「そうなんだ。」
「小湊先輩も去年、同じ課題やったんだって~知ってる話だと和訳しやすいとか、前に使った人の書き込みあるとか…洋一はそれ目当てで本探してたよ。」
「ははっ、アイツらしい。」
そんな話をしながらも真琴はパラパラと辞書をめくり、だんだん口数も減り課題に集中し始めた。
俺ってこんなに集中力なかったけ?
隣にいる真琴を横目に用もなく手元の辞書をめくる。
「うーん…ねぇ、御幸くん?ここなんだけどね…」
「えっ!?あっ…どこ?」
俺は慌てて真琴が指を差す英文を覗く。
「あぁ…これはーー」
自然と二人の距離が近付く。
「そっか!そうだねーー」
急に真琴が振り向く。
「「あっ…」」
お互いの顔が間近にあり一瞬、二人とも固まった。
「っ…///ごめん!」
咄嗟に少し離れて謝ったのは俺だった。
「…ううん///」