第8章 綺麗な花を君に|マゼラ
毎日欠かさず行っていた彼の船に
行かなくなってもう2週間が経とうとしてる
多分、彼は気にもしていないだろう
だって、勝手に押しかけてただけだもの
「こんにちは、おばちゃん。」
「あら、○○ちゃんじゃないか。
今日も可愛らしいね。どこかにお出かけかい?」
「そうだよ、お花でも摘みに行こうかと思って。
おばちゃん、いる?」
このおばちゃんはとっても話し好きで、
よく色んな噂話を教えてくれる
おばちゃんが少し不思議そうな顔をしながら
「あら、嬉しいわね!
でも○○ちゃん…
最近そこの花畑に骸骨が出るって話よ。
だから気をつけてね。」
骸骨?
まさか彼が…?
いやでも彼がそこに行く用事はないはず
「…そうなんだ。でも大丈夫だよ!
おばちゃん教えてくれてありがとう。」
これでも冒険者だからね!と
おばちゃんとの話を終え、花畑へと足を運んだ
「ここはいつ来ても、綺麗… …。」
誰もいない花畑で寝転がる
1人でこの場所に来るのがもう定番に
「おばちゃんの分の花摘んで帰ろう。
… …もう少しで、忘れられそうかな。」
「…もう、俺さまの分は摘んできてくれないのか?
誰の事を忘れるんだ…?」
独り言を呟いたはずなのに、
好きでやまない彼の返事が返ってきた
声のした方へ顔を向ける
そこには、彼が立っていた
「ひ、久しぶりだね…船長。」
「おぉ、そうだなァ。
○○、体調は良くなったみたいだな。」
「うん…。摘んだお花をあげる約束してるから、
帰るね。」
「…待て。またそういって何日も会わないように
するのか…?」
「やだなあ…そんな事しないよ。
会いに行けなかったのは、体調が悪かったからだよ。」
また嘘を重ねる
「本当は知ってるんだ。
具合が悪かったんじゃないんだろ。
ここに、何日も花を摘みに来てたろ。
…声はかけなかったが、○○の事見てたんだ。」
俺のせいだろ、すまねェ…と申し訳なさそうな彼
違うんだよ
マゼラのせいじゃない…
ぽろぽろと涙が頬を伝う
「ごめんね、船長。
船長はマリーヌ様が好きなのに、私…船長の事好きなの。
でも諦めるよ、だからちょっと待って。」
気を遣わせてごめんね…と謝る○○
違うんだ、お前にそんな事を言わせたくて
ここに来たんじゃない