so ist es immer【Levi dream】
第3章 a beautiful nudity
それはもし、今日みたいにジゼルを攫おうと企む人間がいればその人間をこの世から抹消してもいいという事だった。エルヴィンの許可を得たリヴァイは満足そうに野菜のスープを口に含む。殺さずに戦えと言われることの方が難しく感じるリヴァイはさっきの出来事を思い浮かべていた。
真っ青になったジゼルの顔色を見て血の気が引いた、心臓が嫌な音を立てて胸に刃物が刺さったかのような錯覚に襲われたリヴァイは我を見失いそうになりながらも必死にジゼルの脈を感じ取ろうとした。たった数ミリで保たれていた理性をなんとか保ちながらジゼルの心臓に耳を当てれば弱々しかったが聞こえてきた心臓音にどれだけ安堵したか。それと同時に無様に転がる死体をもう一度葬り去りたいという自分も居て。ジゼルの冷たい体を抱き締めながらも視界の隅では既に絶命した死体を睨んでいたリヴァイ。
だがそれと同時にジゼルがあの時気を失っていてくれて良かったとも思った、人を殺す場面を見られてしまえばそれこそジゼルに会わす顔がなくなる。血飛沫が飛び散っても人間の肉が飛び散っても、人間の肉が切られる時のあの生々しい音を聞いても一切動揺をしなかったリヴァイ。きっと地下街での生活が彼をこうさせてしまったのだろう。だが、後悔はしていなかった。何より自分の腕の中にいる小さな存在に張り詰めていた糸が切れ、リヴァイらしくもなく膝から崩れ落ちた。
ジゼルに感謝と謝罪くらいは伝えなよ、というハンジの言葉が脳内に何度も響き渡る。分かってはいるものの今この状況でどんな顔をしてジゼルと向き合えばいいのか、そんな術すらも知らないリヴァイは宙を睨みながら自分用に淹れた紅茶を口に含む。
「リヴァイ、奴らの身柄だが黒幕が見つかるまで憲兵にはまだ引き渡さないつもりだ。明らかにジゼルを狙った行動と目的を聞かない限り我々も対処出来ないからな。」
「ああ、分かってる。簡単に黒幕とやらが出てくるとは思わないがな。」
「…承知の上だ。だが、必ずまたジゼルを攫おうとする輩が現れる、私はそう踏んでいる。」
「下手すりゃ黒幕以外は死体でお前の元に来るかもな。」
「…仕方がないだろう、その時の判断はリヴァイに任せる。」
「俺は汚れ役か?」
「ジゼルを守る為だ」
「冗談だ、理解している。」
「ああ、……頼んだよ、リヴァイ。」
リヴァイは遠い眼差しで何かを見つめて小さく頷いた。