第6章 Ohno.
『ねえねえ、君さー…』
「あはははー…」
はあ、疲れた。
愛想笑いってのは本当に疲れる。
それになんなんだ。
話し相手ってだけなのに、
彼はガンガン質問攻めしてくる
彼氏はいる?だとか好きなタイプは?だとか
お前に関係ないだろって感じ。
疲れて外へ出ると、
ベンチあたりに人影が見えた。
(先に来てる人がいる…
後でまた来よう…。)
と引き返そうとすると、
「ねえ、君」
話しかけられた。
振り向くと彼は私を見ていて、
手招きまでしていた
「は、はい」
「ここ座んなよ
座りたくて来たんでしょ?」
そうなんだけど…。
マイペースな彼に誘われ、
お隣にお邪魔する。
ぼんやり見えていた顔を見ると
どうやらかなりのイケメン。
まさかとは思うが、
彼も合コン?
「俺ね、人が多いとこ苦手なの
だから打ち上げとか苦手」
悟ったように彼はそう答えた。
おっと、顔に出ていたか。
人が多いとこ苦手とか、
私と同じだ!
「私もです」
「マジ?
合コンとか特に無理
人数合わせとか言ってさ、
セッティングの餌にされんの、俺」
そりゃあ…、
イケメンですもの
美人は食いつきますよ、きっと
「帰っちゃおうかなあ。
なんか、疲れちった…」
ぐたぁ…、とうなだれる彼。
そう言えば打ち上げとか…って、
彼はまさかのまさかだけど…
まさかなの!?
「ふふふ、ねえ。
俺と遊ばない?」
「い、えっ…あのっ…」
「そうだなあ…。
美術館とかどう?ねえ?」
迫ってくる彼の顔。
それはまさかの、あの人。