第6章 Ohno.
「離して!!痛いよ智っ!!!」
時々、彼が分からなくなる。
ただの幼馴染みの大野智は
イライラすると無言になるくせがある
何を話しかけても無視。
何度もそういう経験をしたから分かる
「…痛いってば!!!」
振り解くと、立ち止まる智。
いつもそう。
訳もわからぬまま、引っ張って
離してと言っても聞いてくれない。
「……なんで」
「え?…」
「なんで分かってくれないんだよ!!!」
智が大声で怒鳴った。
初めてだ、こんなに大声出したの
涙目の智はギュッと拳を握り締めてた
ジンジン痛む腕を押さえ、
再び智に問いただす。
「なにが…?」
「おいらはこんなに、
こんなに想ってるのに…」
智は涙を拭いながら、
鋭い目つきで私の方をジッと見た。
それはいつもの優しい目つきじゃなく
ジットリとした重い視線。
なんだか智が怖くなった。