第6章 Ohno.
私の本当のお父さんは、
大野さんを見て驚いた顔をしていた。
『なんで、
なんで、言わねえの
俺と居て楽しかったんじゃ
なかったのかよ!
ずっと、これからも一緒に、って
本当は思っていたんじゃねえのかよ…』
汗だくの大野さんを見て、
息切れする大野さんを見て、
涙目の大野さんを見て。
私は、嬉しいと思ってしまった。
「お父さんのとこに、帰らないと
いけなくなったの
お母さんに偶然会って病気って知って
家の跡を継がなきゃいけなくなった
駄々をこねてどうかなる年じゃない」
お母さんがガンを患って、
余命宣告までされて。
お父さんは目も悪くなってきて、
歩けなくなってきた。
心臓病も患ってるらしい。
あの時、
私は捨てたんじゃない。
要らないって、言われたんじゃなかった。
「だから帰るの。
もう、迷惑はかけないから」
『……、そっか
そんなら仕方ないな』
『愛里、すまないな…。
迷惑なんて、気にしなくていい。
良いから、お前はお前がしたいように
してくれたらいい
父さん達は家を継いでもらえたらいいから』
お父さんはニコッと笑った。
涙で溢れる目を、拭って
私は大野さんの方を向いた。
いつまでも思い通りになんかいかないけど
わがままなんて言えないけど。
せめて、
ありがとうを君に伝えよう。
「大野さん、ありがとう。大好き」
大野さんがいたから、
私はいつでも笑顔になる事ができたの。
本当に、ありがとう。