第3章 Sakurai.
翔くん、君はズルい
こんなにも辛くて、
こんなにも悲しくて
こんなにも、泣いてるというのに
翔くんと居ると笑えるんだ。
翔くんと居ると素直に泣ける
「....帰ったらコーヒー入れるよ」
ギュッと繋がれた手が、
温かくて嬉しくて。
引っ張られながら、
しゃっくり上げながら、
声を頑張って押し殺して、
泣いた。
「....ぅっ.......ぁっ...」
別れたくなんかなかったけど。
大好きだからずっと一緒に居たかったけど。
それでも、やっぱり翔くんが居た。
「翔くんっ...」
「付き合ってなんて、言わないから。
大丈夫、俺、待つの平気なんだよね?
だからゆっくり歩こう」
隣を見たら翔くんが居て、
前を見ても翔くんが居て。
ねぇ翔くん、やっぱりズルいよ。
誰かにすがりたい私に、
好きだなんて。
そう思う私は、
やっぱり翔くんが好きなのかもしれない