第3章 届かない願い
アオイちゃんに促されるままに、隠とは別の入り口から屋敷の中へ入り、気が付けば俺は机越しにしのぶさんの診察室に居た。
俺の背後の窓からは、来た時の様に大勢の隠が外を歩く音がする。
耳を塞ぎたかった。
でも、と遠ざかる音に振り返りかけるとしのぶさんがそれを制した。
「善逸君、振り返らないほうがいいですよ」
「わかってます・・・わかってるけどさぁ、俺、何も出来なかった・・・」
「善逸君の所為じゃありません。さぁ、これを飲んで少し落ち着いて下さい」
そう言ってしのぶさんはお茶を差し出して来た。
いつも飲まされている薬湯と違い、花の甘い香りがする。
「これは、西洋の薬草を煎じたお茶です。良い香りでしょう?」
そう微笑むしのぶさん。
だけど、いつもと違い、どこか苛立っている様に感じる。
差し出されたお茶に両手を添えたまま、俺の目にはまた涙が込み上げて来る。
「ねぇ、しのぶさんの力でどうにかこんなの止めさせてあげられない?こんなの・・・酷すぎる・・・」
「ごめんね、善逸君。こればかりは私にもどうしようも無い事なの。決定権は別の所にあるから・・・」
「じゃあ、その決定権を持ってる人の所へ、俺行きます!それで、直談判でもなんでもして・・・」
「生憎だけど、それは教えられないの」
「俺は・・・どうすれば・・・」