第3章 届かない願い
薄曇りの空の下、今日も日課の鍛錬に励んでいると、遠くから大勢が屋敷に向かって来る足音がした。
少し嫌な予感がして、目を閉じて音に集中する。
足音は俺の居る庭の反対の正門へ向かっているみたいだ。
「善逸、どうしたんだ?」
「炭治郎ごめん、俺、ちょっと行って来る」
炭治郎の言葉で我に返った俺は、ろくな返事もせずに正門へと走る。
聞こえたんだ。
足音に混じって、何か大きなものを運ぶような音が。
それは、
もしかして
嫌な予感は的中だった。
正門の前には人ひとり入るくらいの木箱がまるで棺の様に数名に担がれている。
「ねぇ、ちょっと、ちょっと待って、それは―」
木箱を担ぐ隠の一人が振り返り困ったような様子で答えた。
「あぁ、君も知ってるんだね、出動だってさ」
「出動って・・・こんな物に入れたら、万が一の時には逃げられないじゃないか!!」
「逆だよ・・・逃げられたら困るんだよ・・・」
そう言って担いでいた他の隠に合図を送り、箱を地面の上に降ろす。
頑丈そうにできたそれは、丁度顔のあたりに透かし模様の細工がされている。
まるで、箱の内側から外の様子をわざとに少しだけ見せるかのように。
ギィと蝶番が嫌な音を立てて箱が開く。
「・・・な、なんだよこれ・・・」
自分の顔が青ざめて行くのがわかる。