第2章 絡まった糸は柔らかな手で解けばきっと
「強くなる」
その前に、やる事があった。
それはこの屋敷の主人のしのぶさんと話す事。
あんな所に女の子を監禁しているのを知らないはずがない。
寝台に戻った後も色んな事が頭を駆け巡り結局少しも眠れなかった。
むしろ、しのぶさんに対して怒りの様な物を感じていたからだと思う。
気持ちを抑えきれない俺は、寝台から起き上がり、しのぶさんの部屋を目指す。
しのぶさんの部屋の数歩前には、アオイちゃんがいつもの様に両手を腰に当てて立っていた。
目ざとく俺を見つけると、少し棘のある声色で話しかけて来た。
「善逸さん、おはようございます。何か御用ですか?」
「ちょっとしのぶさんに話があって・・・」
「しのぶ様はまだ朝の支度中です!それに、今日は予定があって貴方のお話を聞いている暇はありません!」
あぁ、アオイちゃんは可愛いけどこういう所、苦手だなぁ・・・
ぴしゃりとした物言いに思わず引き下がりそうになるが、そんな事言ってられない。
「大事な話なんだよ。どうしても今すぐ話したい事で・・・」
「だから、さっきも言ったでしょう!しのぶ様は」
さっきよりも強い口調のアオイちゃんの後ろで扉が開いた。
「しのぶ様!?」
「おはよう、善逸君。私に急ぎの用?」
そこにはいつもと変わらないしのぶさんの柔らかな笑み。
「どうしても、今聞きたい事があるんです」
うーん、と小首をかしげたしのぶさんは少し考えた後、また笑顔を浮かべる。
「わかりました。それじゃあ診察室へ。その様子だと、人に聞かれたくないお話なんでしょう?」