第1章 もう、泣かないで
「だから・・・あの・・・それが成就した時には、俺と結婚して!!」
「・・・」
沈黙。痛いくらいの沈黙。
え?これ涙流して喜ばれるやつじゃないの?え?
牢越しに抱き着いて来る彼女を想像していたのに、肩透かしを食らう。
目の前にはぽかんとした表情の彼女がただ見つめているだけだった。
「う・・・や、やっぱ駄目?それならせめて俺の恋人に・・・」
重めの沈黙の後、彼女が呟いた。
「外国の方は、積極的なんですね」
「え、えぇ!?俺ぇ?俺は生まれも育ちも日本人ですけど!?」
「す、すみません、髪の色がその・・・金髪だったので、英国の方かと・・・」
「あぁ、この髪ね、これはちょっと昔、色々あって。・・・聞きたい?」
余程人間との会話に飢えていたのだろう。
かと言って自分から振れる話題も、そもそも信用できる人もいるかどうかも怪しい。
躊躇いがちな口元に反し、少し頬を紅潮させてしきりに俺の方をそわそわと見ている。
・・・可愛い・・・
「よーし、じゃあ俺の髪の秘密、教えてあげる!ほら、楽な姿勢に座って」
まるで本の読み聞かせを待ち侘びていた子供の様だった。