第3章 君を愛しているかららしい
「あら?黒羽君はお休み?誰か何か聞いてない?」
朝のSHRで先生が聞くも、青子ちゃんも快斗と連絡が取れてないと言う。
また寝坊じゃね?
どっかでひょっこり来るっしょー
ワイワイ話し出す男子たちに、それもそうね、と納得した先生。
そのまま授業は始まり、午後の授業まではあっという間だった。
怪盗キッドとして動いた翌日、遅刻してでも学校には必ず来ていた快斗。
それが今日は午後の授業が始まっても姿を現さない。
怪盗キッドが盗むものといえば絵画や彫刻、宝石と幅が広いところがシャノワールと異なるところ。
彼の動きを把握するため、予告日には必ず見に行ってはいたが、たまたま昨日は獲物は違えど予告日が被り、見に行けなかった。
華麗に盗んだとニュースでは報道されていたけれど、報道陣の知らないところで警察と一悶着あったか、それとも……
こんなことならシャノワールの予告日を変更していつものように怪盗キッドの様子を見に行けばよかった。
時すでに遅し、とはまさにこのことで、今更昨日のことを悔やんでもドラえもんのいない現代では過去に戻ることも叶わない。
とにかく探しに行かなきゃ。
そう決めた私は、午後の授業を少し受けたあと、美紅に体調が悪いからと伝えて学校を早退した。
何かあった場合に備え、一度家に帰り簡単に身支度をしてバイクで快斗の家へ向う。インターフォンを鳴らしてしばらく待つも、誰かが出てくる気配はない。
うーん、仕方ない。
千影さんとの関係に甘えて、勝手にお邪魔しますよっと。
一応断りを入れつつ、ピッキングしようとしてふと違和感に気づく。
鍵が開いてる。
物音をたてないよう用心して中へ入るが、誰かが侵入したような形跡はなく、それどころか鍵が開いていたにも関わらず家に誰かがいる気配が全くない。
確か外の郵便受けにはまだ朝刊が入っていたはず。
とすると、昨夜から帰ってきてない…?
不安がふつふつと湧き上がり探しに出ようと振り返ると、真後ろに快斗がいて、うわっと声が出てしまった。
「びっ…くりしたー。勝手に入ったのはごめんだけど、いたなら声かけ……快…斗?」
自分の不法侵入はさておき、驚かすなと抗議しようと口を開いた私を黙って見ている快斗。
その顔は無表情で、冷たい碧い瞳にゾクッと寒気がした。