第31章 エピローグ
後ろ姿しか見えないが、そう答えた乃々の声がいつもより明るい
机にある文に目をやるが、五百年後の文字で書かれているため信玄には読めない
(良い報せ?聞いてないな)
「し、信玄様…っ…」
不意に背後から腰に手をまわされ驚く乃々。
「良い報せってなんだ?」
「…知りたいですか?」
乃々の肩に顎を乗せて乃々に問いかけるが、信玄の問いを笑ってはぐらかす。
そんな姿が愛らしい
(随分、勿体つけるな)
なに不自由なく、戦もない平和な時代の暮らしを捨て、自分のところへ来てくれた乃々。
そんな乃々のことを、信玄は月日がたっても愛しくて堪らなかった。