第20章 貴方のもとへ
「確かに魔王と名高い信長様が先鋒にいるのに、臆する様子がありませんね」
「そういうことだ。呑まれれば–––たやすく死ぬぞ、家康」
「忠告のつもりなら、不要です。甲斐の虎を下し、俺が強さを手に入れたと証明してみせる」
「ならば良し」
信長は家康の目に普段は隠れている闘志がふつふつと滾るのを見ると、ふっと笑みを浮かべた。
「これより、二手に分かれ、それぞれの隊を指揮する。何かあれば伝令を飛ばせ」
「承知」
敵の囲いが薄くなる場所を見極め、ふたりは目配せで同時に別れる。
その後ろをそれぞれの隊の兵たちが、すかさず追っていった。