第19章 真実
何もできない自分が歯痒くて、情けなくて、悔しくて…
熱いものがこみ上げるの必死に我慢して、小袖の袖で涙を拭う
涙を拭い開けた引き出しの中に、目をやると……
そこには小花が描かれた朱色の櫛
初めて信玄様に出会った時に、無理矢理渡されたあの櫛だった
これ…この櫛……あの時、返しそびれたやつだ
信玄様と初めて会った時のことを思い出す
『俺を恋に落としていった責任を取ってくれないか?』
あんなこと言って…
責任とって欲しいのは私の方だよ…
あの笑顔…私には守れない?
本当に私にできること何もはない?
信玄様を救える方法はないの?
……この時代じゃなかったら…
………この時代じゃなかったら?
だったら…500年後だったら?
私の頭の中に一つの考えが浮かびかけた時…
カタッ…
天井から微かな物音が聞こえ、それと同時に私の目の前には佐助くんが立っていた