第19章 真実
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安土に戻ってから数日、私はまた家康にこの時代の医学について教えてもらっていた
漢方の勉強をしている間は、春日山のことや信玄様のことを思い出さずにすむ
「家康、これどこに仕舞えばいいかな?」
白い袋に入った漢方を家康に見せる
「中身はなに?」
「麻黄(マオウ)と杏仁(キョウニン)なんだけど」
「麻黄を一番上の右から三番目、杏仁は三段目の左から五番目の引き出し」
家康はゴリゴリと漢方をすりつぶしながら答えた
「はーい。」
言われた場所にしまうため、薬棚の左右上下にたくさんある引き出しを数える
杏仁は三段目の左から……一、二、三、……
『…一……二……三……』
頭の中で引き出しを数える自分の声と、あの時の夜の信玄様の声が重なる