第17章 隠された半月、半分の心
「君には、そう見えてしまうのか」
信玄様の瞳が静かな光をたたえて私に向けられている。
それが落ち着かなくて、そわそわと半月に視線を逸らせた。
「月、見ないんですか?」
「ああ。もう、見ない」
「…ど、どうしてですか?」
「月見は、君に逢うための口実だ。君だって、薄々はわかってただろ」
気付かぬふりをしていた事実を突きつけられて
「…そ…それは……」
言葉が出て来なくなった。
私だって分かってた…
貴方に会うために、その口実を私も利用してたから…
そんな理由がないと、貴方には会えなかったから…
貴方と…一緒に過ごす時間が…尊かったから…
「もう、口実は使わない。限りある時が、惜しいからな」
「…え?」
どうして…信玄様は…私と同じことを……?
信玄様は気だるげに、障子を閉めた。