第14章 戦の跡
「…あのっ……信玄様…私……」
「待った!!」
申し訳なさそうに口を開く私にを引き寄せ、唇に人差し指をあて言葉を封じる
心の奥に押し込めていた恋心が、水が湧くように隙間から漏れ出す
「その続きは二人きりで聞きたい。今は、きみを独り占めしたい…」
そう言って、引き寄せた私の頭に唇を寄せた
……またっ…!この人は、私を戦の駒にするのに……私の心を弄ぶ……
「…や、やめてください!」
身をよじり、その手から逃れるように離れた
信玄様への気持ちを悟られまいと、湧き出る想いに蓋をする
ダメ…
信玄様のペースに乗ってしまったら…
私が私でいられなくなる…
「お願いです…お礼を言いたいだけですから…。ふざけないで…」
静かに…感情を出さないように…悟られないように…
「…そんな顔をして…普通にしろって?普通にしてないのはきみの方だろう」
え……?
「今にも泣き出しそうな顔をして俺に駆け寄って……そんな健気で可愛いらしいきみを安心させ、笑わせるにはどうしたらいい?」