第13章 戦の駒
「……離してください」
小さな声で冷たく言い放つと、信玄様は驚くほどあっさりと私を解放した
「安心しろ。君を戦に連れて行くのは今回だけだ。お披露目がわりに連れ回して、織田軍をおびき出す。」
「…どうしても…戦をするんですか?…またっ、誰かを失ったとしても?」
「…そうだ。」
「何がっ…何があなたをそんなに駆り立てるんですかっ?」
やめて…
お願い…
戦なんてやめて……
私を利用…しないで……
心の中で叫ぶけれど、その声は届かない
「…信長への恨みだよ」
「それで…もし…幸村が死ぬことになっても?」
信玄様の眉がピクリと動く
「……この戦で死ぬのなら、あいつも本望だろうさ」
……!!
「…さい…最低…です。…人の命を…なんだと思ってるんですか?!」
溢れ出しそうな涙を堪える
どうして…
どうして…みんな、憎しみあうんだろう…
敵でも味方でも…みんな大切な人がいるはず…
「乃々に嫌われるのは悲しいなぁ」
私が必死な言葉を投げかけても、信玄様はおどけてみせる
…この人に、私の声は届かないの?
「私は…行きません。」
「出立は5日後だ。泣いてもわめいても、君を連れて行く。」
「…もう二度と私に近づかないで」
信玄様を睨んで、私は部屋を出た