第9章 掴めない心
「まぁ、そう言うな。
乃々が戦の駒として使えるのは間違いなさそうだ」
「どうしても、ですか」
「あぁ。時がくればな」
その時…乃々はどんな顔をするだろうか…
俺を罵り、恨むか……
「信玄様はそれでいいんですか?」
佐助のやつ…何か勘ぐってるな…
無表情で何考えてるか分からないが、妙に鋭いところがある…
「あぁ。武田の悲願のためだ。」
「ーーーわかりました。」
「謙信と幸もそれでいいな」
「あの女が俺に関わらなければどうでもいい」
「俺は信玄様の決断に従うだけです」
–––これでいい。全部、俺が生きてるうちに信長を倒すためだ
何かの感情を押し殺したような顔をすると、ふと幸村が真剣な顔で見つめる。
「信玄様、最近はお変わりないですか」
あー…俺の身体のことを、気にしてるんだな
「んー? 乃々も少しずつだが、心を開いてくれてるぞー」
「そうじゃなくて……」
言いかけた幸村を、目で制止する。
「余計な心配するな、幸。あの戦の続きと行こうか。俺たちの悲願を成就させよう」
あーあー…そろいもそろって辛気臭い顔、しやがって
こういう時に、自分の命運が疎ましくなる。
こいつらには全員、病のこと知られてるから、やりづらいったらねえーーーー
信玄はため息混じりに、遠くに目をやった