第8章 未来への帰り道
「鈴ちゃん…そんな大袈裟なことじゃないのよ。当たり前のことしただけだから」
「乃々様…!!!やはり乃々様は素晴らしいお方です…!!もう春日山の中では、乃々様のお人柄がとても評判になっていて。重臣の中には、このまま謙信様の側室に!と言ってる方もいるとか…」
鈴ちゃんの言葉に頭を殴られたような衝撃が走る
「は、はぁ???な、なんでまた私が謙信様のっ??!!」
それ!!前も女中さんに言われたやつ!!!
あまりの衝撃で声も裏返る
「昨晩の謙信様への対応と、あの信長公の寵姫ならば謙信様相手でも大丈夫なのでは。ということらしいです。」
なんで…どういう思考してるの?
大丈夫とか、猛獣使いでもあるまいし…
謙信様の側室なんて、命が何個あっても足りないじゃない
刀を突きつけられたことを思い出すと、ゾクリとする
「でも…私もそうなったらいいな…って少し思いました。」
「鈴ちゃんまで何言って……?……え?鈴ちゃん?」
言いかけて、鈴ちゃんの顔を見て言葉がとまる
「乃々様は…いつか春日山を出られてしまいますから…。
せっかく仲良くなれたのに…もし謙信様と一緒になられれば、ずっとここにいますよね?」
悲しげに私を見ると、泣きそうな顔をした
「鈴ちゃん…。ありがとう…。」
そんなな鈴ちゃんを私はぎゅっと抱きしめた
兄弟のいない私には、鈴ちゃんが本当に妹のように感じる
佐助くんがこの時代に情を残すなって言ったけど…
あとふた月で鈴ちゃんと離れてしまうのが悲しい…
ごめんね…。
ごめんね……鈴ちゃん。
「でも…ね…鈴ちゃん…
考えてみて……
あの謙信様の側室って無理じゃない?」
悲しみを隠して、悪戯に笑ってみせる
「……ですよね」
少し間をあけて、鈴ちゃんはいつもの愛らしい笑顔を浮かべ答えた。