第7章 満月に浮雲
そういえば綺麗な月だったな…
信玄様は、外へと続く障子を開けると
外にはさっき見た、美しい月が浮んでいた
「確かに…今日の月は綺麗ですね。」
「そうだろう」
得意気な顔をして信玄様がこちらを見ると、目があってドキッとする
「で、でも月じゃなくても、昼間とかでもなにか…」
信玄様の瞳から逃れるように俯くと、一人言の様にボソボソ呟く
すると、突然、行灯が消されると、ほの暗い部屋が月明かりに照らされた
「し、信玄様!!!」
「君は警戒心が強いなー。ほら、月だけでも充分明るいだろう。今じゃなくたって、君を襲う機会は幾らでもあった。だけど、俺は君に手を出したりしてないだろ」
うーん…だけど、未遂っぽいことはあった気がするんだけど…
「それに俺は嫌がる女を抱くほど、女に飢えてない。」
ははは。と余裕の笑みを浮かべる信玄様に、その理由の方がしっくりくると思ってしまう。
「確かに、女の方には不自由してなさそうですね」
あの日いた女と信玄様の姿が浮かべると、私の声は冷ややかなになった。
私の冷たい声で、あの時の女とのことだと察したのか
「あれは…まぁ…あれだ。大人の嗜みというか…。うん…まぁ…」
月を眺めながら信玄様が言い訳めいた様に口籠った。