第14章 悲しき鬼女、レッドアイ族の悲劇
「お前にはこの石の美しさが、分かるか?」
「ええ」
「星や月を、花の色を見たことがあるか?」
「星も月も花も、私を恐れないから…」
「俺にはそれを見ることが出来ないんだ。花が綺麗だとか、星がたくさん出ているとか、月が綺麗だとか言われても、目を開けば花は跡形もなくなる。星や月も、見えるのは自分が放つ熱線だけだ。お前は美しさや色を見ることが出来る分、レッドアイ族より恵まれているとは思わないか?」
「私はまだ、恵まれている…?」
「俺は思うんだ。他種族の者を勝手に化け物と呼び、無抵抗の者の命を楽しそうに笑いながら奪う者こそが、真の化け物じゃないかとな」
話を聞いていた○○が涙を流す。最初は宝石だった涙は次第にその形をなくし、ついには普通の涙となり、髪のコブラたちもカラ松を威嚇するように首を広げていたが、なんと普通の髪になった。下半身すら今は二本の足で立っている。
「あああ…!!私にかけられていた呪いが…!」
『お前にかけた呪いは、すでに解けていたのだ。だがお前が自身を化け物だと思う心が強いゆえ、元の姿に戻る術を見失っていた。今お前はその男の言葉に、本当の意味での化け物が何かを気付いた。ゆえに元の姿に戻れたのだ』
「誰だ?!」
『私はアテナ。戦の女神だ。確かに私も心が狭かった。若気のいたりというやつだ。メデューサ○○よ、その男に感謝するがよい』
「はい、アテナ様!!私はこの方に、ついていきます」
「俺と共に、ストーグロックへ行くか?」
「はい!」
「戦うこともあるぞ?」
すると○○は、アテナに懇願した。
「アテナ様!元の姿に戻れたのは嬉しいのですが、それではこの……えっと…」
「カラ松だ」
「カラ松様をお守り出来ません!」
『ならば望む時に敵を石化する視線の力を残そう』
「ありがとうございます!」
「よかったな」
カラ松に抱きつく○○。
「カラ松様、ありがとうございます!」
「いや、大したことはしていない」
「いいえ、カラ松様がお越しにならなければ、私は自分の愚かさに気づくことなく、ずっとあの姿のままでした」
「それとだ、そのカラ松様ってのをやめてくれないか?敬語もやめてもらえるとありがたいんだが」
「……じゃ、じゃあ、カラ松………。これでいい?」
「ああ、それでいい」