第13章 泣き声の正体
洞窟の壁に触れて原因を探る。すると穴が空いていることに気付いた。手で穴を塞ぐと、泣き声が止まる。
「風穴か…!」
聞こえていた泣き声は泣き声ではなく、風穴が起こす音だった。一松にどう詫びようかと考えていると、おそ松たちの声が聞こえた。
「おおおおお!!あっちにも、こっちにもある!」
「これだけあれば、遊んで暮らせるね!」
「カラ松もこっちに来いよ!拾うのを手伝ってくれ!」
「ルビーにサファイア、オパール。すごいな」
「でも街ではこんな話、聞いてないよね。どういうことなんだろう?」
「案外化け物の話も、ここに近付かせないための嘘なのかもね」
「クソ松の言う泣き声も、やっぱり聞き違いだったってわけか。後で半殺しだな」
カラ松がおそ松たちの方へ行くと、そこには普通の石とは形が違う物が転がっていた。
「これか?」
「そう、それ!売ったらいい値段になると思うよー」
「これだけあれば、お金に困ることはないね」
「新しい矢を、たくさん買える!」
「俺も自分の剣を、買おうっと」
嬉々として宝石を拾うおそ松たち。洞窟はまだまだ奥がありそうだった。しかも奥に行くにつれて、宝石の数も増える。カラ松も宝石が何なのか分からないままに拾い始めたその時。
「あ。聞こえる」
「確かに!」
おそ松たちは確かに聞いた。洞窟の奥の方から聞こえる、誰かの声を。それは泣いているようにも聞こえる。
「やっぱり聞こえる!俺、確かめてみる。ここにいててくれ」
カラ松は宝石を拾うおそ松たちに言い残し、さらに奥へと進む。宝石とやらの数も、進むにつれて多くなる。
「誰かいるのか?!いたら返事してくれ!」
洞窟に響くカラ松の声。だがそれに答える者はない。さらに進むと、宝石が足の踏み場もないほどに散らばっている。美しい輝きを放つその石の美しさもその輝きも、カラ松には見ることが出来ない。レッドアイ族にとって宝石など、ただの石でしかないのだ。
「宝石とやらがどれほどの物かは知らんが、そんな物があるから争いが起こるんだ。……俺たちレッドアイのように…。くそっ!」
カラ松が洞窟の壁を叩く音が響いた。まるで洞窟内にカラ松の怒りを知らしめるかのように。
「誰がいるのかは知らんが、出て来い!自分だけが悲しい思いをしていると思うなよ?!」