第13章 泣き声の正体
部屋に案内される時、カラ松は老人に聞いてみた。
「この辺りで泣き声を聞いた気がしたんですが、やはり俺の思い過ごしでしょうか?」
老人は動きを止めて考えた。
「泣き声?はて……?」
「いや、聞こえないのならいいんです」
頭を下げて去っていく老人を見送り、カラ松は一旦宿屋の外に出ることにした。
窓からそれを見ていた一松が、外に唾を吐きかける。
「まだ引きずってやがるのか、あのバカ」
そしてそれを追いかける、おそ松の姿。
「カーラまっちゃん」
「おそ松?!どうしたんだ?」
「俺も混ぜてよー。仲間だろー?」
「おそ松…」
「一松は怒ってたけどさ、お前は眼を閉じてる分、俺たちより耳がいいと思うんだよねー。だからさ、俺もお前が聞いた泣き声ってのを、確かめたいわけよ」
「すまん」
「なーに謝ってんだよ、水くさいじゃん。んで、お前としてはどうしたいわけ?」
「まずは他に泣き声を聞いた者がいないか、聞いてみたいんだ」
「オッケー。酒場だな」
そういうとおそ松は、さっさと酒場に入って行った。
「らっしゃい」
「ねーねー。この辺りで泣き声が聞こえてこない?」
「泣き声?」
「ずっと聞こえてるんだが、俺の気のせいなんだろうか?」
「どの辺りからだ?」
カラ松が泣き声の聞こえる方向を指し示すと、店主の顔色が変わった。
「それを知って、どうするつもりなんだ?」
「確かめたいんだ」
「やめた方がいい」
「何故なんだ?」
店主はカウンターに身を乗り出すようにして話し始めた。
「その泣き声の聞こえる場所は、ここから少し西にある洞窟の奥からだ。だがそこには、それは恐ろしい化け物がいて、訪れる者を食っちまうんだ。何人かがそこに行ったが、誰一人として帰ってきた者はいない」
「じゃあ誰からその話を聞いたんだ?」
「えっ?」
「誰も帰って来ないなら、誰がその化け物の話をしたんだ?」
「それは……。とにかく、行かない方がいい」
店主の話は、ただの噂話でしかないと判断したカラ松は、店主に礼を言って酒場を出た。慌てて追いかけるおそ松。
「行くんだろ?」
「もちろんだ。この眼で確かめる」
「俺も行く。何か、すっげぇ確かめたくなった」
洞窟に向かう二人の背後に近づく足音に気付き、カラ松は足を止めた。
「どったの、カラ松?」