第10章 自我を食らう者
「へへーん。でもこれ、重いんだよなぁ。俺には合わないや」
「ちょっと貸して!」
十四松はモーニングスターを手にすると、思い切り振り回した。
「おりゃー!どぅーん!!」
ゴブリン城に向かって投げると、門が壊された。
「はい、開きました!」
「ご苦労さん!」
中へ入ったおそ松たちは、そこで足が止まった。
「何だ、これ!!」
「どうなってんだ?!」
中は階段だらけだった。それだけではない。その階段自体が色んな方向を向いていて、中には天地が逆さのものもある。どう行くのかが分からない。ただ一人を除いて。
「何を言ってるんだ?行くぞ」
「クソ松!お前、この状況が見え………ないよな」
「カラ松、教えてくれ。お前にはどう見えてる?」
「真っ直ぐ続く廊下があるだけだ。他には何もない」
おそ松たちには、目の前に大きな階段が見えている。その階段すら途中でねじまがっている。だがその階段は、カラ松には見えていない。幻覚なのだ。
「………よし!全員目を閉じて、カラ松についていくぞ!」
「そうだな」
「あいあい」
「分かった!」
おそ松がカラ松と手をつなぎ、その後にチョロ松、一松、十四松が手を取り合って目を閉じた。
「いいぞ、カラ松。行ってくれ」
「ああ。俺を信じてついてこい」
歩き出すカラ松。おそ松はつい薄目を開けた。
「うわわわ!」
目の前に階段が迫る。
「おそ松!大丈夫だ、何もない。階段などないんだ」
「う、うん。カラ松を信じる」
「くそっ!クソ松が格好いい…!」
「ふふーん。惚れたかぁ?」
「調子に乗んな!○すぞ!」
「ひぃ!」
「もー!こんな時にやめてよ!」
「あはー!階段が僕らに合わせて、後ろにいくよ?おっもしろいね!」
「え?」
十四松の言葉に目を開くと、さっきと同じ階段がずっと目の前にある。足を進めるたびに、同じように階段も後ろへ下がる。
「本当だ!おもしれぇー!」
「多分侵入者が諦めるようにしたんだろうね」
「なるほど。でも頭脳食いとしては、逆に来て欲しいんじゃない?」
「それもそうか。ならこれは、誰が…?」
「その答えもきっと、廊下の向こうだろうな」
「確かに!」
やがて諦めたように幻覚が消え、おそ松たちの前に大きな扉が姿を現した。
「どうやって開けるんだ?」
「やってみマッスル!」