第5章 心優しき残虐なる者
「僕も師匠がいなくなってから、おそ松兄さんに会うまでは、一人だったから」
「兄さん?」
「あ、僕がそう呼んでるだけ」
「あ、そ」
しばらくしてようやく森を抜けた4人。
「はー。やっと道が見えたよー。長かったー!」
思い切りのびをするおそ松。と、アニマル系モンスターが襲いかかってきた。
「うぉ?!」
十四松が矢をつがえようとするのを、一松が止めた。
「大丈夫」
モンスターに手を伸ばす。するとまるで猫のように甘えだした。
「よしよし、よしよし」
モンスターを撫でるその表情は、とても優しい。
「心優しき残虐なる者、か」
「友達なんだ」
ひとしきり撫でると、モンスターは去って行った。
「あいつ前に、黒魔法の生け贄にされそうになったのを、俺が助けた」
「だからあれだけなついてたのか」
「俺は他の奴らみたいに、多種族のモンスターを生け贄にするなんて、出来なかった。闇エルフになり損ねた、闇エルフさ。だから明るい場所でも、平気なんだ」
「でも、黒魔法は使うよね?」
「ああ。自分の体を、犠牲にしてる」
「ええっ?!ちょっと、じっとしてて!回復するから!」
チョロ松が一松に、回復魔法を施した。
「少しはましになるといいけど」
「あ、ありがと」
「僕も頑張って、もっと強力な回復魔法を使えるようにならないとね。例えば、蘇生魔法とか」
すると一松は、少しうつむいた。
「蘇生魔法は、ある意味、黒魔法と同じだ。よほどの力がないと、使うのは危険」
「そうなのか?」
「黒魔法も白魔法も、元は同じだし。白魔法は善、黒魔法は悪って考えてる奴らもいるけど、黒魔法を使う奴が全部悪い奴とはううy限らないし、白魔法を使う奴の中には、悪魔を利用する奴もいる。そっちのがよっぽど悪だと思うけど」
「確かに!」
「そうか…。闇エルフも苦悩してたんだな」
「俺は、な。けど、お前たちに会えたことで、あの忌まわしい集団から抜け出すことができた。礼を言う。俺も、願いを叶えてもらおう。闇エルフたちに、優しい心が戻るように」
十四松が何かを思い付いた顔をして、言った。
「ねぇねぇ!みんなのこと、兄さんって呼んでもいいかな?」
「え?序列的には、お前が先におそ松の仲間になったんだぞ?」
「うん。でも僕、小人族だから当然だけど、みんな背が高いから」