第4章 森を統べる王
「やい、ライジング!!」
男はおそ松を見ると面倒そうな顔をして、近衛兵に何か言いつけた。すると近衛兵はおそ松に向かって剣先を突き付けてきた。
「きたねぇぞ!それでも男かよ?!」
「王子はご多忙でいらっしゃる。貴様のような暇な奴を相手にする時間など、ないんだ」
「は?!俺、暇じゃねぇよ?!ふっざけんな!勝手に決めつけやがって!!」
その様子を男は、驚くほど冷めた表情で観ていた。その時だった。
ヒュン!!
一本の矢が飛んできた。十四松はおそ松の隣にいるので、彼ではない。後ろを見ると、黒い肌のエルフが群れを成して攻撃していた。
「闇エルフだ!闇エルフの奇襲だ!」
森エルフたちも応戦し始める。
矢の一本が、男目掛けて放たれた。
「ライジング、よけろ!」
おそ松が男をかばう。
「ぐぁっ!!」
矢はおそ松の肩に、深く突き刺さる。
「よくも、おそ松兄さんを!!」
十四松は矢を数本まとめてつがえ、放った。同じように次々と矢を放つ十四松。そのどれもが外れることなく、闇エルフたちに命中する。
おそ松はゆらりと立ち上がり、闇エルフたちを睨み付ける。
「この俺を……なぁめんなよぉ?!」
ロック鳥の姿になり、木々を倒しながら羽ばたく。しかし矢で射ぬかれた肩が痛むのだろう、思うように羽ばたけない。が、闇エルフたちを驚かせるのには成功したらしく、恐れを成して逃げる者もいた。
「ぐぅ…っ!俺様の羽ばたきで、吹っ飛べぇえ!!」
さらに羽ばたくと、闇エルフたちの部隊がいくつか吹き飛ばされた。
「撤退!撤退!」
隊長と思われる闇エルフの命令で、奇襲部隊は引き返していった。それを見届けたようにおそ松は、気を失った。
「おそ松兄さん!!」
抱え上げる十四松。
「おい、そいつをこっちに!」
森エルフ王子の案内で城の中に入る。
「この部屋に!」
そこは医務室らしい。ベッドに寝かせると、王子はおそ松の肩に手を当て、呪文を唱え始めた。
優しい光がおそ松を包むと、苦しそうだった呼吸が穏やかになり、そのまま眠りについた。
「これで大丈夫だ」
「よかった…」
「君は僕についてきて。ルグは彼が起きたら、玉座の間につれてくるように」
「かしこまりました」
医務室の森エルフに告げると、十四松を連れて玉座の間に入る王子。玉座には森エルフ王が座っていた。