第6章 願い叶えて
私って強欲だ。
ほんの少し前までは、ユキくんと以前のような関係に戻れたらそれでいいと思っていたのに。
想いが叶った途端、もっと一緒にいたい、と願ってしまうなんて。
「時間がある時には、こうして会いに来るよ」
「うん」
「俺たちは運がいい。こんなに近くにいられる恋人たち、そうそういるもんじゃねぇだろ?」
「本当だね」
ユキくんには心を見透かされているのかな。
まるで私の甘えた気持ちを宥めてくれてるみたい。
家に辿り着き明かりを確認すると、どの部屋の電気も真っ暗。
葉菜子もお父さんたちも、もう眠りについたようだ。
「いざとなったら、舞の両親に頭下げるつもりでいたんだけどな」
「え?今日?」
「大事な娘を夜連れ出したわけだからさ?」
「ユキくんて意外と真面目なんだね」
「ちゃんと真面目だ。誰かさんは勝手にチャラ男扱いしてたけど」
「うーん。誰のことだろう?」
「おい」
家の前で、少しふざけつつ別れを惜しむ。
「でも折を見て、本当に挨拶するよ」
「いいよ、そんなの気にしなくて」
「俺が気にすんの。コソコソする必要ないだろ?清く正しいお付き合いなんだから」
「うん…」
「いつまで清くいられるかわかんねーけど」
「……」
「黙んな」
「だって…」
もう、子どもじゃない。
ユキくんの言葉の意味だってわかるからこそ、反応に困る 。
「舞。急かすつもりねぇよ。ゆっくり、な?」
そう言って私を抱き寄せて、優しく髪を撫でてくれる。
「うん…」
好き…やっぱりどうしようもなく、ユキくんが好き。
今日だけで何度そう思ったか。
「また明日な」
「おやすみなさい」
私が玄関の扉を閉めるまで、ユキくんはそこにいてくれた。
お風呂に入っている時もベッドに潜り込んでからも、ユキくんと触れ合ったことを思い出すだけで胸の高鳴りは一向に止まない。
なかなか寝付くことができず、翌朝は結局、少し寝坊してしまった。