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淡雪ふわり【風強・ユキ】

第2章 愛のオムライス



「オムライス、本当に美味しかった。ごちそうさまでした」

「こっちこそ。クッキー美味かったよ、ありがとう」

「ごちそうさん。次練習来れるの、来週だっけ?」

「うん。ちょっとバイトとか色々あって。最近顔出せなくてごめんね」

おしゃべりが楽しくて、ついつい長居してしまった。
時計の針はもうすぐ16時を指そうかというところ。
もう一度お礼を言って、靴を履く。
振り返ると、何故だかハイジくんとユキくんは顔を見合わせていた。

「「行かないのか?」」

示し合わせたかのように声が重なった。

「「……」」

ん…?どうしたんだろう。
今度は無言で見つめ合う二人。

少しの沈黙を置いて、ハイジくんが先に声を放つ。

「ニラの散歩してくる」

「…ああ」

ユキくんは短く返し、靴を履くハイジくんに目をやった。

「舞ちゃん、家の方まで一緒に行くよ」

「うん」

最後にユキくんの姿を目に映して手を振る。

「またね、ユキくん。お邪魔しました」

「おう。またな」

小さく頷いて笑ってくれるユキくん。
その笑顔を見られただけで、じんわりと胸が満たされる。




ハイジくんとニラと一緒に向かう先は、商店街。
実は帰る前の二人の空気がずっと気になっていて…。

「ねぇ、さっきのアレ何?」

「アレって?」

「ユキくんと見つめ合っちゃって」

「ああ」

少し空を仰いだハイジくんは、クスリと笑ってニラを見下ろす。

「どっちがニラの散歩に出るか、探り合いしてた」

「ん?ユキくんがニラの散歩してるところなんて、見たことないけど」

「そうだろうな」

意味深な笑顔だけ返して、ハイジくんはそれ以上何も言わなかった。


ニラの散歩を兼ねているとはいえ、結局ハイジくんは私の家まで送ってくれた。
帰りはもちろん、いつもどおり。
ニラと「よーいドン!」で走り出す。




ハイジくんのオムライス。
ユキくんが褒めてくれたクッキー。
三人での楽しいおしゃべり。


こんなに素敵な日曜日は、久しぶりだった。



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