第13章 予選会
迂闊に声をかけられる雰囲気ではなくなり、私たちは遠巻きにみんなを見守った。
そのうちに王子くんも合流し、運命の発表を待つ。
『ただいまより、東京箱根間往復大学駅伝競走、予選会通過校を発表します』
場内に響いたアナウンスに、ドクンと大きく胸が跳ねた。
いよいよだ…
正面ステージに設置された白紙の掲示板に注目が集まる。
選手たちが固唾を呑んで待ち構える中、その第一声がマイク越しに響く。
『1位―――東京体育大学』
少し離れた場所で歓声が湧いた。
ハイジくんは、今大会を1位で通過するのは東体大ではないかと予想していた。
掲示板に示された合計タイムは、10時間09分12秒。
10分を切っており、ハイペースなレースであったことがわかる。
『2位―――甲府学院大学』
『3位―――帝東大学』
次々に読み上げられるのは、箱根駅伝出場常連校の名前。
6位、7位、8位…
喚声が増えていくたび、そばにいる葉菜子の声ですら聞こえづらくなってくる。
それなのに、さっきから自分の鼓動の音ばかりが耳について仕方がない。
みんなここまで必死になって練習してきた。
楽しいことは全部後回しにして、走ることだけに懸けてきた。
私はその熱を知っている。
ここで終わりなんてあんまりだ。
どんなに足掻こうとも既に結果は出ている。
もう祈る以外、何もできない。
お願いします、神様。
どうか、寛政大学を箱根駅伝に―――!