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淡雪ふわり【風強・ユキ】

第1章 ふわり、舞う



「ごめん。走ってもない私が偉そうに…」

「いや…舞ちゃんも走ってるじゃん」

「え?」

「俺たちは、舞ちゃんやハナちゃんとも一緒に走ってる。二人とも、れっきとしたチームの一員だよ」


―――嬉しい。
そんな風に思ってくれていることが。
私でも、ほんの少しは力になれてるのかな。


「いや、それはそれとして!やっぱ今の発言は偉そうだな!」

「えぇ!?ごめ…」

「何か見透かしてるっつーの?」

「そんなつもりはなくて、何となく思っただけ…」

「ムカつくからもう呼び捨てにする」

ユキくんはメニュー表をズイッと私に差し出した。


「舞。次、何飲む?」


「……」


たかが呼び方ひとつだけど。
勘違いかな?距離が縮まったみたい。

「何ニヤニヤしてんの」

「ううん。頑張ろうね、記録会」

「今それ言う?」

「先に話題に出したのユキくんでしょ?」

「そうでした」

私は陸上経験者でも何でもないのに。
初めてユキくんが心の内を見せてくれた。

悩んでる顔、私を助けてくれる顔、ふざけて笑う顔。
もっと色んな顔を、沢山見られたらいいのにな…。





ほろ酔い気分で二人並んで歩く。
街中の桜はすっかり散ってしまった。
心地よい春の空気と優しい月明かりを身に感じながら、家に向かって進む。

「そういやぁ、さ」

「うん?」

「舞の私服姿、初めて見た」

「いつもジャージだもんね」

「ちゃんと化粧してるのも」

「ああ、うん…」

練習の時は、軽くファンデーション塗って、眉毛を描く程度しかしていない。
ユキくんが知ってるのは、そんなお洒落とはかけ離れた私。

合コンだから張り切っちゃった?みたいに思われてるのかな。
何か、恥ずかしい…。


「可愛いじゃん」

「え?」

「褒めてんの」

「…あ、りがとう」

顔にブワッと熱が篭もる。
どうしよ…嬉しい。
ユキくんに、可愛いって言ってもらえた。

そっと視線を移した先に浮かぶ、色白なユキくんの肌。
街灯に照らされたそれは別の色に染まっていて。

「ユキくん、顔赤くない?」

「はぁ!?あ、かくねぇし!」

「照れてるの?」

「うっせー。前言撤回すんぞ!」

「え、やだ!」



ユキくんこそ、何だか可愛いよ。




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