第11章 プレッシャー
「そう言えばスタート前に送ってきた写真。思わず笑っちゃいましたよ」
「お、アレな!いい顔してただろ?」
「何の話ですか、ユキさん?」
「王子があまりにも神妙な顔してたからさ、舞が写真送ったんだよ」
スマホを取り出した王子くんは、LINEのメッセージ画面を開いてハイジくんとムサくんに向けて見せる。
「ああ、この前の海での写真か!」
「本当だ。皆さんいい顔してる」
足を海水に浸して一人佇んでいるところや、ハイジくんにお姫様抱っこされてるところ。
男子三人ではしゃいでる笑顔。
それに加えて、合宿の最終日にみんなで花火をした、夏の夜。
最近ではアオタケのみんなとの写真ばかりが増えていく私のスマホのフォルダ。
その中から、メンバー全員の笑顔が映った画像を王子くんに送っていた。
「僕ってこんな風に笑うんですね」
「他人事かよ」
「かなりレアだけどな」
左右からユキくんとハイジくんに茶々を入れられる。
「僕が頑張ったら、きっとみんなこの写真みたいに笑ってくれるんだろうなって思って。そしたら、ちょっとやる気が出ました」
「「……」」
「王子サァーン!あれだけのプレッシャーの中あなたはみんなを想って…!尊敬です〜っ!」
「心が美しすぎるよ王子くん…!ねぇ、二人とも?」
スタート前の気持ちを打ち明けられ、ムサくんと共にまた感激する。
ユキくん、ハイジくんはと言えば咄嗟にあらぬ方を向いて目元を押さえていた。
「……え?泣いてるの?」
「泣いてねぇし!コンタクトズレただけだし!」
「ユキくん眼鏡じゃない」
「俺もコンタクトが…」
「ハイジさんは僕並みに視力いいはずでしょう?」
私たち四人のやり取りを聞きながら、王子くんはフッと息を漏らして笑った。
公認記録全員達成となった、記念すべき日。
お祝いの余韻に浸る私たちが宴会をお開きにしたのは、もう少しだけ夜が深くなった頃のこと。